第6章 ドラッグストアにおけるOMOの実装ポイント

JASEC 日本イーコマース学会

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第6章 ドラッグストアにおけるOMOの実装ポイント

第6章 ドラッグストアにおけるOMOの実装ポイント

  • 4月14日
  • 読了時間: 8分

ドラッグストアのOMO(Online Merges with Offline)は、生活の「高頻度来店」と、「健康・日用品・食品」が重なり合う複合需要をどうつなぐかで決まる。ホームセンターが比較的まとまった課題解決やプロジェクト支援を担うのに対し、ドラッグストアは、日々の生活そのものを支える業態である。したがって、アプリ、EC、店舗が一体となって、顧客が「必要なときに、すぐに、習慣的に」買える環境を整えることが、ドラッグストアのOMOの核心となる。実際、マツキヨココカラ&カンパニー、ツルハホールディングス、サンドラッグ、コスモス薬品はいずれも、アプリやデジタル接点、調剤機能、店舗運営を組み合わせながら、店舗来店と再来店を促す仕組みを強化している。



① マツモトキヨシの「アプリ連動型OMO」:来店前の準備と来店後の継続利用

 マツモトキヨシ・ココカラファイングループでは、アプリを単なる販促ツールではなく、来店前後の行動をつなぐ基盤として位置付けている。統合報告書では、経営統合後のシナジーの一つとして、会員基盤、EC、アプリの統合を進めてきたことが示されており、実際に「マツキヨココカラアプリ」の提供や宅配サービス、「マツキヨココカラMe」の機能拡充などが進められている。沿革にも、「マツキヨココカラMe」の機能拡充が明記されており、アプリが継続的に顧客接点として強化されていることが分かる。

 同社のデジタル施策で重要なのは、来店前の確認機能である。ココカラファイン時代の公式リリースでは、ウェブ上で店頭在庫と価格を確認できる機能や、アプリと同一IDでログインできる仕組みが導入されたことが示されている。さらに、当時の株主向け資料でも、公式アプリにクーポンなどの機能が搭載され、マイストア登録によって店頭商品の在庫状況や販売価格をリアルタイムで確認できることが説明されている。これは、来店前に必要な情報を把握し、そのまま店舗に向かうというOMOの基本動線を支える設計である。

 このように、マツモトキヨシのOMOは、アプリで準備し、店舗で購入や相談を行い、その後もアプリを通じて次の購買へつなげる循環を整える方向に進化している。ドラッグストアのようにリピート需要が高い業態では、この「来店前・来店時・来店後」を切れ目なくつなぐことが重要であり、同社の取り組みはその典型例といえる。



② ツルハHDの「調剤×日用品×アプリ」:生活拠点としての進化

 ツルハホールディングスの強みは、ドラッグストアとしての物販機能に加え、調剤やデジタル機能を一体で整備している点にある。公式の経営理念ページでは、医薬品や健康食品、化粧品だけでなく、医療用品、介護用品、育児用品、日用雑貨、食品まで幅広く取りそろえていることが示されている。また、DX戦略として、スマホアプリ、キャッシュレス決済、電子薬歴システムなどを導入し、「より便利で安全な質の高いサービス」を提供する方針を掲げている。

 同ページでは、ツルハグループアプリについて、支払い、ポイント、クーポン利用を一つで完結できるアプリとして紹介され、グループ合計で1,000万ダウンロードを突破したことが示されている。さらに、お薬手帳アプリについても、お薬情報の管理と処方せん予約ができるアプリとして案内されており、EPARKお薬手帳アプリ、LINE、グループのWebサイトから予約できることが明記されている。調剤戦略に関する決算説明資料でも、電子処方箋対応、オンライン資格確認、処方せん送信・予約サービスの拡充、自社アプリ経由でのアクセス強化が掲げられている。

 ここから見えてくるのは、ツルハHDのOMOが「薬を受け取る場」と「日用品を買う場」を分断せず、同じ生活動線の中で結び付けている点である。アプリがクーポンや決済、ポイント利用の入り口となり、お薬手帳や処方せん予約が来店機会をつくる。その結果、店舗は単なる物販の場ではなく、健康と日常生活を一体で支える拠点へと進化している。



③ サンドラッグの「OMO接客モデル」:アプリと調剤DXの連携

 サンドラッグも、アプリと店舗接点を組み合わせたOMOの整備を進めている。2023年には公式アプリのリニューアルを実施しており、アプリが同社にとって継続的な顧客接点であることが確認できる。また、ポイント会員規約では、サンドラッグポイントがグループ各店舗で付与・利用できる仕組みが示されており、アプリや会員基盤が来店時の購買行動と結び付いていることが分かる。

 さらに、サンドラッグのプライバシーポリシーでは、クーポン配信やお知らせ情報の配信、アプリ利用状況に基づいたポイントなどの特典提供、撮影した処方せんを利用した受付などが利用目的として明記されている。つまり、アプリは単に販促情報を届けるだけでなく、調剤受付や会員特典ともつながった接点になっている。

 調剤分野でも、サンドラッグはDXを進めている。統合報告書では、調剤事業におけるDXの推進を重要テーマとし、オンライン服薬指導システムや、アプリで処方せんを送付して待ち時間を短縮する仕組みを整えていることが説明されている。加えて、2022年にはLINEミニアプリ「サンドラッグ処方せん送信」の提供を開始し、2024年には「楽天ヘルスケア ヨヤクスリ」の導入も公表している。サンドラッグのOMOは、アプリやLINEなどのデジタル窓口から店舗・薬局利用へと自然につなげる設計に特徴がある。



④ コスモス薬品の「地域密着OMO」:店舗網と公式アプリの活用

 コスモス薬品については、他社のようにポイント経済圏を前面に出すモデルではなく、地域密着型の店舗網と、アプリによる情報接点が特徴である。公式サイトでは、公式アプリの案内が掲示されており、プライバシーポリシーでも、公式アプリでのサービス提供、商品・サービス情報の配信、閲覧履歴等の分析に基づく広告配信などが利用目的として記載されている。株主向け資料でも、公式アプリでクーポンを配信していることが明示されている。

 また、コスモス薬品は大規模な店舗網を持つ。2024年5月期決算資料では、2024年5月末時点の店舗数が1,490店、そのうち調剤併設店が50店とされている。2025年5月期決算では、2025年5月末時点の店舗数は1,609店、うち調剤併設店は53店へと増加している。さらに、店舗検索ページでは、2026年2月28日時点の全店舗数が1,662店と案内されている。こうした広い店舗網は、アプリやオンライン上の情報を実店舗の来店行動につなげるうえで大きな基盤になっている。

 コスモス薬品のOMOを考えるうえで重要なのは、アプリが「地域の店舗へ向かうための情報窓口」として機能している点である。公式アプリでクーポンや情報を受け取り、最寄りの店舗で購入するという動線は、派手なデジタル施策というより、地域密着型の店舗網を生かした実用的なOMOといえる。

 


⑤ データ活用:リピートと健康支援の設計

 ドラッグストアのOMOは、単なるチャネル統合ではなく、顧客の再来店や継続利用を設計する取り組みでもある。マツキヨココカラでは、アプリ・EC・会員基盤の統合を進め、ツルハHDではアプリ、決済、クーポン、お薬手帳をつなげ、サンドラッグではクーポン配信やアプリ利用状況に基づく特典提供、処方せん送信機能を整備している。コスモス薬品でも、公式アプリを通じた情報提供や広告配信の仕組みが明記されている。いずれも、購買履歴やアプリ利用情報をもとに、次の来店や購買につなげる発想で共通している。

 ドラッグストアは、医薬品だけでなく、日用品、食品、衛生用品、化粧品といった反復購買の多い商品群を持つため、OMOの設計も「一度きりの購買」ではなく「次も同じ店に来てもらうこと」が中心になる。だからこそ、アプリの役割は、販促だけでなく、習慣化、想起、再来店支援へと広がっている。OMOは、ドラッグストアにおいて、生活者のリピートサイクルを設計するための仕組みになっている。



⑥ まとめ:ドラッグストアのOMOは「生活のリピートループ」を設計する

 ドラッグストアのOMOは、ホームセンターのような「プロジェクト支援型」ではなく、「生活のリピートループ」を設計する仕組みとして発展している。マツモトキヨシはアプリと会員基盤の統合を進め、ツルハHDは調剤、日用品、アプリを一体化し、サンドラッグはアプリと調剤DXを連動させ、コスモス薬品は地域密着の店舗網と公式アプリを接続している。各社の方法は異なるが、共通しているのは、来店前の準備、来店時の購買、来店後の再来店支援を、一つの流れとして設計している点である。

 OMOは、ドラッグストアにとって単なるチャネル統合ではない。生活者が必要な商品やサービスに、より自然に、より継続的にアクセスできるようにするための設計思想である。店舗とアプリをつなぐことによって、ドラッグストアはますます生活の中に深く入り込み、日常の一部として機能していく。




参考文献

■ ドラッグストア:アプリ・OMO・調剤連携

マツキヨココカラ&カンパニー

※アプリ統合、顧客基盤、EC・デジタル戦略

在庫確認・EC連携(ココカラファイン時代リリース)https://www.matsukiyococokara.com/news/archive/cocokara/pdf/20161018_PR01.pdf

※店頭在庫・価格確認機能、オンライン→来店導線

ツルハホールディングス

グループ事業紹介(DX・アプリ・調剤)https://www.tsuruha-hd.com/company/group/groupinfo/

※アプリ(ポイント・決済・クーポン)、お薬手帳、処方せん予約

※調剤併設、デジタル活用、顧客接点強化

サンドラッグ

公式アプリリリースhttps://www.sundrug.co.jp/news/post-9452

※アプリ機能拡充、デジタル接点

※調剤DX、オンライン服薬指導、処方せん送信

プライバシーポリシー(アプリ活用範囲)https://www.sundrug.co.jp/privacypolicy

※クーポン配信、利用データ活用

コスモス薬品

※店舗・アプリ・地域密着戦略

※店舗数、調剤店舗構成

※地域密着・健康支援

■ 業界・市場背景

経済産業省

※小売DX、OMO、店舗役割変化

電子商取引市場調査https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tyoukei/result-2.html

※EC化率、オンライン行動の背景

■ 補足(業態理解)

※ドラッグストア市場規模・業態特性

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